今から1年前に完成した「こよみこけしシリーズ」第一弾の「花こよみ」と、その後に完成した第二弾の「旅こよみ」の開発ストーリーをご紹介します。
開発ストーリー
2014年12月初旬に創作こけしのプロデュース企画が動き始めました。その企画の目的は、伝統こけしを付加価値化し、こけし初心者と言える一般の方にアプローチすることにありました。
発表日を第3回国連防災世界会議(2015年3月14日〜18日)の直前に設定し、国内外から多くの方々が仙台に来る機会に、伝統こけしと新進のクリエイターのコラボレーションを披露し、伝統こけしの新たな市場獲得のきっかけになればと考えました。
企画チームが先ず懸念したのが、伝統こけし工人にこのようなコラボレーションを依頼できるのかということでした。とても幸いなことに、依頼をした小笠原義雄工人(遠刈田系伝統こけし工人:伝統工芸士)は企画内容を快諾していただき、このコラボレーションが実現できる体制が整っていきました。
こけしは子供へのお土産であった歴史を踏まえ、コンセプトは四季を知らせる贈り物(四季折々のメッセージ)とし、12月の暦をテーマに、また12月の草花をモチーフにした12本1組の伝統系創作こけしを制作することで企画が進んでいきました。
伝統こけしに現代的な感覚を付与するため、地元仙台のイラストレーター佐藤純子さんに胴絵のデザインを依頼しました。また、コンセプトを掘り下げるためデザイン/アートディレクターの佐藤悠さん(株式会社ディストーション・ヴィーツ)にパッケージデザインを依頼しました。
この創作こけしのプロデュース企画では、伝統こけし本来の古典意匠を残し、そこに現代の生活感覚を融合することが1つの課題でした。小笠原義雄工人と佐藤純子さんの組み合わせはとても相性のよいものとなり、斬新かつ筋の通った上質な創作こけしをつくることができました。
佐藤悠さんによるパッケージングは、贈り物としてのコンセプトを深化させた、こけし本来の贈り物としての価値を再認識するデザインとなりました。
「花こよみ」と名付けられた12本1組の創作こけしは、第3回国連防災世界会議に合わせて2015年3月7日から開催された藤崎百貨店「藤崎JAPAN WEEK 『Made in TOHOKU』」で発表され、限定セットでの販売が開始されました。
この「花こよみ」発表の前後に、「花こよみ」で得た経験をもとに2番目のシリーズとして「旅こよみ」が企画されました。この時、「花こよみ」と「旅こよみ」を合わせたシリーズ全体の名前として「こよみこけし(こよみこけしシリーズ)」と名付けられ、この企画に継続性が付与されました(今も継続しています)。
「旅こよみ」は、星定良工人(弥治郎系伝統こけし工人)とイラストレーター泉友子さんのコラボレーションとなり、伝統こけしの古典意匠と現代の感覚の融合というデザインコンセプトをより斬新に表現する創作こけしとなりました。
星定良工人の手による木地、伝統のお顔、ロクロ模様と、泉友子さんが自ら絵付けをした胴絵の組み合わせは、どんなこけしとも大きく違うとても個性的な創作こけしとなりました。
仙台近郊の小旅行やイベントをモチーフにした12本1組の「旅こよみ」は、2015年5月1日から開催された仙台パルコ「手みやげ広場」でお披露目がおこなわれました。
こよみこけしシリーズは「The Wonder 500」認定(2015年8月27日)、「2015年度グッドデザイン賞」受賞(2015年9月29日)といった評価をいただき、現在国内5店舗、海外5店舗で販売され、今後も新たな取扱店舗が加わり、首都圏百貨店での催事への出展も予定されています。
この「こよみこけし」という創作こけしプロディース企画が、一時のものではなく海外まで紹介される試みとなったことが、今後の伝統産業の高付加価値化のよい先例となることを期待し、またよりよい先例となるよう目指していきたく思います。
(た)